何年か前に自殺した、Kの話
歳が30になるかならないかだと思うけど、Kが自殺したって話が聞こえてきた。
Kとは小学校3年生の時に転校してきて出会った。
当時は転校生ってものに憧れ的な、異邦人のもつ異文化さが
気になって自分から話しかけ仲良くなった。
家もそんなに遠くなくよくお互いの家や公園でミニ四駆を走らせたのを覚えている。
仲は良かったと思ってるが、理解しがたい動向もあって、
ここらへんのムーヴが異邦人的ふるまいなんかなあと感じていて、
特に覚えているエピソードを書く。
算数の授業で三角定規(で名前合ってたっけ?)の構造を覚えよう
というお題目で2枚それぞれの三角定規の角を覚えようという授業があった。
アレって仕組みがわかれば簡単で、まず60の倍数に慣れていて
三角形の角の合計は180ってのを踏まえておけば
二等辺三角形の方は90の角があり、残りの角は同じ角度なので45度。
もう一つの三角形の方は同じく90の角があり、
それ自体を長い線で背中合わせすると正三角形に
なるので1角は60、おのずと残りは30度。
覚える要素は角の数6つではなく、角の合計は180ってことだけ。
小テストがあり三角定規の角度を答えようという問題で
オレは即回答で一抜け出来たのだが、Kは全く分からないようで
う~んと唸っている。
算数の授業は最後の時間枠で、小テストを終わらせないと帰られない。
何度か先生の所へ答えを言いに突撃したが不正解。
結局Kは終業時間が来てもまだわからないらしい。
いっしょに帰りたかったオレはどうにかしてヒントをやろうと思ったのだが
何故わからないのかオレもわからず、
結局先生もお手上げになったような記憶がある。
今になって考えると彼の学力レベルは残念ながらその段階で
もう決まってたのだと思う。
もう一つ。
オレたちが仲良くなってからの夏。
近くの公園で祭りが開かれることになった。
「一緒に行こうぜ、祭り始まるくらいで迎えに行くわ」
と学校で話し、迎えに行ったとき。
呼び鈴押して「迎えに来た」と言ってから中々出てこない。
何か良くない会話をしている雰囲気。
あー、行けないのかなあと思ってたらドアがガチャッ
「ダメだって」
ともう今にも泣きそうな悔しそうな顔で言われた。
悔しいのはわかるし、オレも一人で行ってもしゃーないし、
それをKにぶつけてもしゃーないし、「まあまた遊ぼうぜ」
と言って結局祭りには行かず家に帰った。
後から、何で先に親に頭だししておかなかったんかなあ~、
少し遅い夕方~夜だから外出NGなんかなあとか考えたが、
答えが出ないので考えるのはやめた。
高校の時に夜中12時くらいに高城剛Xを見に家に行ったときは
親から全く文句をいわれなかったので、
気分で考えをコロコロ変える親に振り回され苦労してるのが伝わってきていた。
Kとオレがいた仲良しグループは偏差値のせいでKとオレだけ違う高校に行った。
Kは勉強が出来ず同じ偏差値の高校に行けなかったのだ。
(オレは↑の方のとこにいったぜ)
その後のKの動向はつかず離れず、たまに会って遊ぶとか。
尾崎豊にはまってギターを始め、繁華街の端っこの飲み屋で
ライブやったりとかしてるの聞いた時は
ヴォースゲーと思った。
で、その後ちょっとした行き違いあって、完全に断絶してしまった。
オレもその学校での仲良しグループとは共通の趣味があるやつとしか会わず
何年か後ある日「Kは自殺した」との話を聞いた。
理由は「東京で女に騙された」という。
詳細は本当にわからないのだが、新興宗教の教祖が女で、
身ぐるみはがされて心まで奪われズタズタにされ、吊ったのだという。
その話を聞いた時は悲しまなかった。「そういうことかも」とも思った。
生きづらそうだった。毒親要素とか、冴えない風の外見とか、氷河期世代とか
外的要因も追い風になったんだろう。しょーもないことでケンカしてたり
三角定規の件とかで、何かうまく世間にはまれないまま生きてきて、
ずる賢い奴に手玉に取られたんだろう。よくある話さ。
人生って辛いんだなあと感じた。
仲良しグループの別のやつが遺品整理を行って
親に金を渡した際「余計なことしやがって」
と怒られた話を聞いた時はさすがに憤慨したけどね。
職場で少し関わってる他チームの若い集から問い合わせを受けるのだが
うまく物事を説明できない男の子がいる。
その子と話をしているとKを思い出した。
歳を取り、立場が変わったため気づけた。
Kに対する先生の気持ちはこうだったんだろうかなと。
どう話したとしても伝わらない。うまく世間にはまっていない。
人生のいろいろな分岐を選択し、到達するべきでない結論に達してしまったKと
どうしてもかぶってしまう。
間違った選択はさせたくないが、どう言っても伝わらない。疲労。
ふと、思い出したので書きました。